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賑やかな球場、湧き上がる歓声、響くバットの音・・・ってことでは野球の試合を見にきています。 このチケットは糸色先生が偶然にも貰ったもので、「よかったですね」と言えば「これで運を使い果たしていたらどうしましょう!」と先生は軽く混乱していたが折角貰った物なのでと言うことで、二人で行くことになったのだ。 はお手洗いに行っていて、今から先生の元へ向かうところだった。 すると前方に見知った人を見つけては駆け寄った。 「麻奈実ちゃん!」 「ちゃん、来てたんだね」 そう言って笑う彼女は売り子の格好をしていて、バイト中だとわかった。 「偶然だね」とがはしゃいでいるとキンと良い音がして球場が一気に沸いた。 打ち放たれたボールを目で追っているとどうやら場外ホームランなようでボールがこちら側に飛んできている。 するとそのボールの先には、糸色先生が座っているのが見えた。 え、あれ、先生にぶつかっちゃうよね? そう思っているうちにゴッと音を立てて先生の顔にボールが当たった! 「先生!大丈夫ですか?」 「意外と伸びないんです、最近のボール」 に続いて麻奈実ちゃんも声をあげる。 先生がこちらに気づいて顔をあげる。 「さん・・・痛かったよぉお!」 そう言って先生が泣きながら抱きついてきたので「痛かったですね」と頭を撫でてあげた。 「先生、運まだ残ってましたね」と言うと「こんなのはいらないです」と不貞腐れていた。 しばらくすると落ち着いたようで二人で席に腰かけた。 「たしかに球場によって最近のボールはわざと飛ばなくしているって言いますね」 先生は自分に当たったボールを手にとって「わざと性能を抑えることは昨今少なくありません」と言った。 F1でタイヤに溝を入れてコーナーリングスピードを抑えたり、アナログのレコードが好まれたりと先生は例を挙げてる。 「つまり、今はデチューンの時代と言えましょう!」 「デチューン?」と聞き返すと「みんな上がり過ぎた性能にうんざりしているのです」と先生が答える。 「日本に今必要なのは、性能を抑えるデチューンなのです!」 「デチューンですか?」 「いつのまにか普通に入れ替わった!?」と先生が奈美ちゃんを見て言う。 先ほどまで近くにいた麻奈実ちゃんがいつの間にか遠くで販売を開始しているのが見えた、バイト中にごめんね! 先生が奈美ちゃんに「あなたもデチューンですか?」と聞いた。 「わざと性能落として普通にしてるんですよね」 「少年漫画に出てくる女生徒がまさか全力でその程度なわけないですものね」と先生は納得した風につぶやいた。 「奈美ちゃんはいつでも可愛いよ!」 「ちゃん・・・」 「奈美ちゃんの実力はこんなものじゃないよ」 そう言ってやってきたのは可符香ちゃんだった。 「全力だしたらこのくらいですよ」と言う彼女のイメージはかなりの美人で、と言うかもう奈美ちゃんじゃないような・・・。 本人も「誰よコレ!」と非難の声をあげていた。 「たしかにそこまで美人だと逆に引いちゃいますね」と賛同する糸色先生に可符香ちゃんが「適度に劣化した方が心地良いんです」と言っている。 これに対しても奈美ちゃんは「私が劣化と?」と声をあげた。 「ちゃんも劣化してるもんね」 「?」 「ちゃんが本気出したら恋人たくさんになっちゃいますからね」 「可符香ちゃん?」 「普段は劣化してるけど、本当はハーレムを作ろうとしてるんです!」 「そうなんですかさん!」と可符香ちゃんの話にすっかり影響されて糸色先生が混乱しているようだ。 「私なんて・・・」とつぶやく先生に「には先生だけですから」と声をかけて慰める。 今日は何かこんなの多いな・・・。 先生を落ち着かせてから、たちは可符香ちゃんの案内で数々のデチューンの行われている店へと向かった。 店の中には伝説のデチューナーのヂュンちゃんと言う人がいた。 「ここより深夜の首都高、大酷PAあたりにたむろってるぜ」と紹介してくれたので、折角なのでそちらまで足を運ぶことに。 「わぁっいっぱいいますね」 PAに着くと人が大勢いた。 「あれは相当デチューンしてるぜ」と野次馬の隙間から様子を窺うと某漫画が大量に返本されていた。 「笑いすぎて人死にが出ないようにわざとつまらなくデチューンしているのです」と原作者が訴えているが「嘘つけ!全力でそれだろ!」と奈美ちゃんに言われる始末・・・頑張ってください。 その他にも色々なデチューンがあった。 「欠点をデチューンと言い換えていませんか!?」 「そんな事ありません、デチューンする事によって人は安心感を得るのです」 そう言う可符香ちゃんは「全力出したものより少しデチューンした方がウケがいいんです、圧倒的に!」と力説する。 わざと痛々しく作った声優のCDのCMにファンが安心したり、劣化させたアニメ絵がNYで芸術として評価されたり、などらしい。 思わず賛同したくなる可愛さだけど、彼女の挙げていく例を聞いてむしろはちょっと不安になったり・・・。 「あれ?千里ちゃん?」 「さん。」 そう思っていると視界に千里ちゃんを捉えたので声をかけた。 「あなたデチューンとか許さなそうな感じですけどね」と先生が言うと「私もデチューンしましたよ」と千里ちゃんが答える。 「何を?」と聞けば、「お肉が切れすぎてしまうので、あまり切れないようにデチューン。」と包丁を見せながら言う。 怖っ!怖いよ千里ちゃん! 「切れない!切れないよぉ!」叫びながら千里ちゃんが何かを切る音が聞こえている! 「やっぱりダメ!デチューンはよくない!きちんと全力ださないと!」 そう叫んで千里ちゃんは一緒に来ていた晴美ちゃんの肩に手を置いた。 そしてなぜかの肩もがっしりと掴まれているのですが・・・。 「全力でそれじゃないだろ。もう少し出来るだろ!」 「な、なんでこんな格好・・・」 「媚びろ!もっと、媚びろ!」 なぜかスクール水着を着て猫耳をつけたたちがポーズをとらされている。 「もう、無理!」 全力出すのも大変です・・・。 |