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夏真っ盛り、たちは海に来ています。 砂浜にはたくさんのパラソルが並んで、大勢の人が夏休みを楽しんでいる。 もちろんたちも、夏休みを満喫中だ。 「はい、トス!」 へ組のみんなと糸色先生と一緒に浅瀬でビーチボールをしているのだ。 みんなの水着姿が見れて嬉しい!・・・ビーチボール楽しいよ! でも、糸色先生がいつもと違う感じがするんだよね・・・。 「ちょっと飲み物買ってくるね」 ビーチボールに夢中で喉が乾いてしまったのでみんなにそう告げて、は海の家へと向かう。 何買おうかなぁ、と思っていると「望ぼっちゃん」と言う声が聞こえた。 うん?この声は時田さん? 「でも一人くらい気づいてもいいのではないでしょうか?特にさん」 「そこは影武者でございますから」 海の家の影からビーチボールをしている方を見ながら先生がそう言ったのが見えた。 え、影武者? ってことはあっちの先生は影武者で、こっちの先生が本当の糸色先生ってこと? 「えっと、本物の糸色先生ですよね?」 「さん!?まさか、影武者に気づいていたんですか!」 先生に声をかけると驚いた様子でこっちに向かってきた。 その剣幕に圧されて「えぇ、まぁ」と答えると、先生が嬉しそうに「さん!」と声を上げて抱きついてきた。 「愛のなせる技ですね!!」 「・・・その通りです!」とは頬の筋肉をつりあげて笑って見せた。 本当はちょっといつもと違うなぁくらいしか思ってなかったとか言えないな・・・。 「でも、先生、影武者ってちょっと大ゲサじゃないですか?」 がそう聞くと時田さんが「実に物騒な世の中ですから」と答えた。 「そうは言いましても、過保護すぎやしませんか?」 を離して先生がそう言った。 「過保護?」と聞くと「それでなくても今の世の中過保護だらけだというのに」と先生は続ける。 保護のためちっとも近くで見れない観光資源とか行き過ぎた抗菌グッズ、政府のニート支援対策費など先生は「どこまで過保護なんですか!」と例を挙げていった。 「絶望した!過保護社会に絶望した!」 先生がそう叫ぶと「過保護に育ったお兄様がおっしゃると滑稽ですわ」と水着姿の倫ちゃんが現れた。 「そうなんですか?」と先生に聞けば「私は過保護になど育っていませんよ」と否定して「それはもう厳しく育てられました!」と言った。 あまりに力を込めて否定しているので、厳しい家庭だったんだなと思うことにしておこう。 「それよりお兄様、あちらで保護者会が開かれるようです」 そう言って倫ちゃんが海の家を指差した。 すると先生が「保護者会!?」と驚きの声を上げた。 「給食費払わない親に逆ギレされたり!子供の成績悪いのをひいきしていると決めつけられたり!体育で転んだだけなのに体罰を疑われたり!あの、保護者会ですか!」 「あの、先生?」 先生が頭を抱えて血相変えているので声をかけると「もお、おしまいだ!」と言って聞こえてない様子・・・。 「保護者がよってたかって私を吊るし上げる!」と言って「こーゆう時こそ影武者の役目ではないのですか!?」と時田さんを見た。 時田さんは「はぁ、しかし」と言葉を濁している。 何か影武者に問題があるのだろうかと思って、まだビーチボールをしているみんなの方を見ると砂浜から影武者に向かって銃口を向けている人が見えた。 そしてぱんっと音がして影武者が倒れ込んだ。 えぇ!?と思っていると「ハズシタカ!」と言ってその人は逃げてしまった。 ってことは影武者は転んだだけってことだろうか・・・無事そうでよかった。 「あっちもたいそう危険でございます。交代なさいますか」 「・・・そうそう武田信玄って影武者5人いたんですよね」 「お兄さまなんたるチキン発言」 「と言うことは、先生保護者会に出るんですか?」 がそう聞くと「保護者会に出れはいいんですね?」と嫌そうに先生が倫ちゃんに確認した。 「えぇただし、保護者会といってもちょっと行き過ぎた保護者の集う」と倫ちゃんがいったん言葉を切る。 そしてその海の家へとたちは移動した。 中に入るとたくさんの人たちが集まっていた。 「過保護者会なのです」 「過保護者会?」 「まあ、保護者なんてたいてい過保護なものですけどね」 そう言って集まっている人たちを見ると同じクラスのネットアイドルをしていることのんがいた。 「あなた保護者じゃないでしょう」と先生が聞くと「ことのんはお肌に対して過保護なのん」と彼女は答えた。 え、でもネットアイドルなんだから本人の日焼けは関係ないのでは? 「たしかにいますよね、ものすごい日焼けに対して過保護な方」 「海、来なければいいのに」 「そーゆう過剰な保護者さんたちの集まりなんですね?」と聞くと「過保護者会ですから」と倫ちゃんが答えた。 他にどんな過保護な人がいるのかと思って近くに居た男の人に「あなたは何を過保護にしてるんですか?」と聞いてみた。 すると「マンガです」と返事が返ってきた。 「保存用の単行本です、この他に読む用と人に貸す用があります」 「・・・それはずいぶんと過保護ですね」 先生も少し呆れ気味だ。 でも「私もしが本を出したら三冊なんて買わなくていいから、一冊をいつまでも大切に持っていてくれた方が嬉しいです」との手を握って言った。 「また自分だけ好かれようと思って」と倫ちゃんが言っているのが聞こえていた。 そんなやり取りをしているとその場にいた男の人が「あなのその袴の柄なのですが」と糸色先生に声をかけてきた。 「当社キャラクターの著作権を侵害していると判断せざるを得ません」と続けた。 キャラクターの著作権? 「払ってください」 「著作権の過保護じゃないんですかぁ!?」 先生は請求書を突き付けられてしまった! すると倫ちゃんが「その他にも過保護者たちがいっぱい」とその内容をあげていった。 「こんな会合まっぴらです!さん、海で遊んできましょう!」 そう言って着物を脱ぎ捨てて先生がの手をひいて海へと向かう。 先生、下に水着着てたんですね・・・やっぱり海で遊びたかったみたいです。 しかしいざ海へと行ってみると「遊泳禁止」の看板が立っていた。 それを見て「仕方ありません、ならあちらで」と先生が場所を移動する。 でもどこへ行っても「遊泳禁止」の看板が立っていて「過保護でしょう!」と先生が声を上げた。 「どこで泳げばいいんでしょうかね?」とがつぶやくと「ここで」と声が聞こえて見てみると泳げるスペースがかなり狭くなっていた。 「せまっ!」と先生も批難の声をあげた。 「何ですかアレは!」 「過保護の功績でだいぶ増えました」 倫ちゃんがそう答えると先生は「もう海は楽しくない!公園で遊びます!」と言うので、は着替えるためにいったん先生と別れた。 今日は海で遊んだあとは浴衣で花火大会をみんなで見ようってことになっていたので、も浴衣を着て先生の居るであろう近くの公園へと向かった。 すると公園には可符香ちゃんがいて「先生、おばあちゃんがお礼を言いたいそうです」とおばあさんを連れていた。 「先生、何か良いことしたんですか?」 「さん、いえ、お礼?」 おばあさんの話を聞くと「先生がおじいさんのお墓をおこしてくれた」そうだ。 「え、あ、いえ・・・」とお礼を言われて先生は照れている様子だ。 「先生、力持ちなんですねぇ」と可符香ちゃんに言われても「はぁ・・・」と言葉を濁しているので・・・もしかして先生じゃなくて影武者の仕業? そう思っていると今度はガラの悪そうな男の人たちが先生を取り囲んでしまった。 「私ではありません!私に似た者のしでかした愚行です!」 「あんた最高だぜ!」 先生もも影武者がこの人たちに何か良くないことをして怒っているのだと勘違いしていたので、「もっと早くあんたみたいな先生に出会っていれば」と言うの人を見て「影武者のやつ、いったい!」と先生も困惑しているようだった。 すると可符香ちゃんが「もうじき花火ですよ」と言っての手をひいた。 それで先生にもそのことを伝えようとして振り返るとあびるちゃんが先生の手を握っていた。 「本当に、私でいいの?」 あびるちゃんの言葉を聞いて驚いている先生は「花火始まるよ」と彼女に手をひかれて歩きだす。 しばらく下を向いていた先生が顔をあげるとと目が合った。 「違うんです!さん、これは!」 先生がそう声をあげると続いてドンっという音が聞こえて先生が何か言ったがかき消されてしまった。 恐らく「影武者が!」と言ったんだと思う。 「もう始まっちゃいましたね」 「急ごう」 可符香ちゃんとあびるちゃんに手をひかれ、たちは急ぎ足でみんなの元へと向かった。 影武者、一体あびるちゃんに何をしたんだか・・・。 |