たちは山に遊びに来ていた。
行く手には水車があったり小川があったりと自然がたくさんある良い景色が広がっていた。
的には、へ組の女の子たちの私服姿を見る方が目の保養になるのだけれど。
首から提げているカメラには風景よりも人物の写真が多いことは秘密である。


「糸色先生、何してるんですか?」
「しーっ、均衡が崩れてしまいます」


道端でしゃがみ込んでいる先生にどうしたのかと思い声をかけるとそう言って指を差した。
何かと思いその場所を見てみると、そこにはヘビとカエルとナメクジが!


「3すくみです」
「カエルはヘビが苦手、ヘビはナメクジが苦手、ナメクジはカエルが苦手って言うやつですね」
「そうです、さん。で、互いに一歩も動けない状態!」


「本当にあるんだ。」と千里ちゃんが声を漏らす。
すると先生が「特に人間界では当たり前の光景」だと言った。


「キツネ拳もそうですよね」


「キツネは猟師に弱く、猟師は庄屋に頭が上がらない、庄屋はキツネに騙される」と可符香ちゃんがキツネ拳について説明してくれた。
ジャンケンやケードゲームの類もこれに当てはまるのだそうだ。
カードゲームかぁ、の好きだった遊○王とかは属性がいっぱいあって多すくみを覚えるのが大変だったなぁ、いい思い出だな。


「・・・しかし世の中ほとんの場合、ダメ3すくみです!よっ」


そう言った先生の足元が急に崩れてしまい、「わっ」と声をあげて先生が下に落ちて行ってしまった。


「に゛ゃぁあ!」


先生!その悲鳴可愛すぎます!!


「糸色先生、大丈夫ですか!?」


先生が落ちていったところへ降りていくに先生は尻もちをついていたが大丈夫そうだった。
「つつつ・・・大丈夫ですよ」とが差し出した手をとって立ち上がった先生は「ん?」と言って固まった。
も固まった。
なぜこんなことろに、洞窟があるのですか?


「これは?」
「何かの遺跡みたいですね」


「触らぬ神に祟りなしです、帰りましょう」と先生は言ったがすぐに「って誰かいますけど!」と続けた。
洞窟の先に人影が二つみえたので少し近づくと見知った人たちだとわかった。


「ここは立ち入り禁止ですわ、お兄さま」
「なにやっているんですか、お前は」


なんとそこには先生の妹の倫ちゃんが!
いかにも発掘してますって感じの格好も似合ってる可愛い倫ちゃんの横には執事の時田さんもいた。
ここは「3すくみ古墳」と言う場所で、伝説の3すくみ像が眠っているのだそうだ。
時田さんが「倫さま、こちらに出土の予感でございます」と言って倫ちゃんがある一点を叩くとガラガラと音を立てて崩れていった。


「ゴッドハンドにございますお嬢様!」
「やらせだろオイ!」


「こ、これは・・・」と思わせぶりな倫ちゃんのセリフに一体なにが出土されたのか、と思いそこをみると・・・。


「嫁・旦那・姑も3すくみ像!!」


旦那は嫁に頭があがらない、嫁は姑にいじめられる、姑は息子に弱い、と言う3すくみ。
「たしかに3つどもえでギリギリ均衡を保っているようです、どれか一つが欠けたり強すぎたりしても大変な事に!」と先生が説明を付け加える。
・・・昼ドラで良く見る図ですね。


「ダメ3すくみですよ!私の仮設が考古学の見地から証明されました!」


「どう考えても最近のでしょう」とつっこむ奈美ちゃんに同意しては頷いた。
するとあびるちゃんが「ここにも像が」と言うのでそこを見ると、「ひきこもりと親とレンタルお姉さんの3すくみ像」が!
「まさに社会問題的3すくみですよ!」と先生がそう言うと倫ちゃんが「これなんかお兄さまに直接関係おありでなくて」と言うので彼女の指す場所を見るとそこには「教師と生徒とPTA(親)の3すくみ」が!
糸色先生が異常に警戒しているPTA、よく「訴える気ですか!」って言ってましたもんね。
他にも「政・官・業の3すくみ」や晴美ちゃんが見つけた「友情・努力・勝利の3すくみ」の像などが発見された。


「3すくみと言うより、それっぽいの3つ並べただけのような・・・」


がそうつぶやいた瞬間、ゴゴゴゴゴスと遺跡内が揺れた。
「ん、地震!」と言う先生に時田さんが「大変でございますぼっちゃま!巨大な3すくみ構造がバランスを崩しつつあります!」と言った。
な、何ですかそれは!?


「埼玉・千葉・茨城の3すくみでございます!」


「それって3すくみだったんだ!」と叫ぶ奈美ちゃんと同じ意見です・・・何か複雑そうな3すくみだな。
「このままでは関東で大きな地殻変動が起きかねません」と時田さんが言うと先生が「えーっ!」と声をあげた。


「逃げなきゃ!」


だっと逃げ出した糸色先生に倫ちゃんが「お兄さまなんたるチキン!」と非難の声をあげた。
「あれ?先生は。」と千里ちゃんに聞かれたので「奥の方まで行っちゃって行方不明に」と答えるとみんなでの捜索が始まった。
「先生ー」とそれぞれが呼びかけるが糸色先生の返事はない。
一体どこまで行ってしまったのか、そう思っていると広い場所に出た。
「何かしら、この部屋。」と千里ちゃんが疑問を口にするがとりあえず全員が中に入った。
すると、急に体が動かなくなってしまった!
たちはその場で固まったように動けなくなってしまったのだ。
「これは3すくみならぬ、クラス全すくみ!」と時田さんが言う。
誰かが誰かに苦手意識を持っているがため、連鎖して全員膠着状態になってしまったそうだ!
「私別に苦手な人いないけど。」と言う千里ちゃんに時田さんが「天敵が存在意識の中にあるのでしょう」と言った。
て、天敵!?


「え、何でこんなにガチガチなんだろう?」
「・・・みんなちゃんには少なからず警戒してるからかも」


えー!奈美ちゃん、それ本当!?
「口説かれるから」とあびるちゃんに理由まで教えてもらいました・・・みんなが可愛いのが悪いんだよ。
思わず涙が零れちゃいそうです。
「ここから一歩も動けないじゃない!」と奈美ちゃんが叫ぶと可符香ちゃんが「一つだけ方法があります!」と答えた。


「一人誰よりも圧倒的に弱い、最弱最下の者を組み込めばいいのです!」
「あ・・・みんないた」


その瞬間、たちは自由を取り戻した。
部屋に入ってきたのは失踪中の糸色先生だった。
先生、無事だったんですね!と声をかけたかったが、今はそれよりもあることが気になって仕方がない。
「やっぱり私たちのクラスに先生は必要です」と可符香ちゃんが言っている。
・・・つまり糸色先生は、最弱最下ってことですよね?
「今回はいい話ですか!?」と喜んでいる糸色先生には、事実を告げないでおこう。


「糸色先生は絶対必要ですからね!」


そう言って先生の肩をポンっと叩くと先生は「え、さん?」ときょとんとした顔をしていた。
先生の居ない生活なんて考えられない!