ある日、ある朝、いつものように学校に来て席に座って先生の登場を待つ。
糸色先生、今日はちゃんと学校来るのかなぁと思いを馳せるのは日課になっている。
そんなことを思っていると戸がガラガラと音を立てて開いた。


「おはようございます」


そう言って教室に入って来たのは糸色先生。
うん、糸色先生。
あれ?糸色先生?
何だか違和感を覚えたので、先生を凝視する。
草履に視線を落とし、そのまま上に舐めるように視線を這わせていく。
はどこのエロオヤジだ、と内心思ったがその瞬間違和感の正体に気がついた。


「眼鏡がない!」


あまりの衝撃に思わず勢いよく席から立って大声で叫んでしまった・・・。
先生に指をさした状態のまま固まっていると、「そうなんですよ、さん」と先生が口を開いた。


「実は眼鏡にだけお経を書き忘れ、亡霊に持ってかれてしまったのです」
「・・・つまり、眼鏡を無くしてしまったんですね?」


先生、言ってる意味がよくわかりませんでした。
が結論だけを述べると先生は「まぁ緊急用の使い捨てコンタクトがあったので、当分コンタクトで過ごそうかと」と言った。
あぁ、そうなんだとは納得したのだが、晴美ちゃんが勢いよく席から立った。


「コンタクトだなんて、そんなの先生じゃない!」
「「え」」


偶然にもと先生の声が揃った。
「そんな先生認めない!」と声を張り上げる晴美ちゃんに千里ちゃんが「何?その沸点?」と冷静につっこみを入れていた。


ちゃんならわかるでしょ?」
はギャップ萌え派だから、別にいいかと」


急に振られたから本音が出ちゃったけど、うん、眼鏡ない先生も好きだなぁ。
「そんな先生認めない」と再度発した晴美ちゃんはだっ!と駆け出して先生の後頭部を叩いた。
そして先生の両目からコンタクトが飛び出て(きっともの凄い衝撃だったんだろう)晴美ちゃんが「みんなカンパよ!」とお金を集めだした。
すると可符香ちゃんが「私が買ってくるよ」と挙手をして、集めたお金を持って学校を後にしたのだった。
そして戻ってきた可符香ちゃんから先生に眼鏡が手渡される。
それは色の入った眼鏡だった。
「なんでそんな色の入った眼鏡を買ってきたのよ。」と言った千里ちゃんに同感だったが、「可愛いかなぁって思って」と答えた可符香ちゃんが可愛いから問題ないよ、ナイスチョイス!
先生は「不思議と度は合ってるようです」と言ってるし、大丈夫そうだ。
しかし、先生は急にをじーと見てきた。


「女子高生ってみんなパンツ売っているんでしょ?」
「え?そうなんですか!?」
「過剰反応しないで、さん!」


先生からの意外な発言に驚いているとまといちゃんが「先生が、物事を色眼鏡で見始めた」と言った。
物事を偏見とか固定概念で見ることを色眼鏡で見るって言うけど・・・。
先生は「巨乳はバカ」などと言っている。
「先生は悪くない、色眼鏡がそう言わせているの!」とまといちゃんが言ったのに対してあびるちゃんが「眼鏡のせいにして言いたいこと言ってない?」と言った。
その会話を聞いて千里ちゃんが先生の眼鏡を外す。
「今何、おっしゃったか、わかってます?」と千里ちゃんが聞くと先生は「さあ?」と首を傾げた。 千里ちゃんが耳打ちをすると先生が大きな声を出した。



「私がそんなひどい発言を!すみませんでした、さん!」


そう言ってに謝ってくるが、その他は違うことを言っていた。
本当に色眼鏡のせいなのだろうか?
すると千里ちゃんがカエレちゃんに眼鏡をかける。
カエレちゃんは「日本人はみんなウサギ小屋に住んでるんでしょ」と言った。
「やっぱり」と千里ちゃんは確信を得たようだった。
う〜ん、普段から言いそうな気がするけど・・・。


「この眼鏡どこで買ってきたの?」
「案内します」


真相を確かめるには眼鏡屋に行ってみるしかない、とたちは可符香ちゃんに案内され眼鏡屋へと向かった。

「眼鏡道楽」というお店に案内されたたちは、早速中に入る。


「いらっしゃいませ」


「店長の鯖江です」と続ける一風変わった店長に出迎えられて千里ちゃんが文句を言う。


「どーゆうつもり!こんな色眼鏡売りつけて!」
「色眼鏡なので仕方ありますまい」
「どんな理屈ですか・・・」


千里ちゃんの文句をさらっと流した店長に思わずつっこみを入れてしまう。
「色々取り揃えているのでごゆっくりご覧下さい」とあくまでマイペースな店長の雰囲気におされてたちは店内を見渡した。


「これ、レトロなデザインですね」


がそう眼鏡を指差して言うと店長が「昭和前期の色眼鏡です」と答えた。
するとその眼鏡を千里ちゃんが取って、糸色先生にかけた。


「女は家庭に入るものだ」


「その当時の眼鏡か!」と千里ちゃんが声をあげたように、先生はすっかり昭和な考え方になってしまったようだった。
でも、その眼鏡も結構似合ってます!
「これは90年代初頭くらいの色眼鏡ですね」と店長が説明した眼鏡を千里ちゃんが奈美ちゃんにかける。
「3高以外男じゃないしぃ」と言う奈美ちゃんの眉毛が太くなっていて驚いた。
「バブルの頃の眼鏡か!」と千里ちゃんがつっこみを入れると店長が「当時はたくさんの眼鏡がありました」と昔を懐かしんでいるようだった。


「でも可愛いデザインもあるのね」


そう言って晴美ちゃんが並べられた眼鏡を眺める。
「試着していい?」と彼女が聞けば店長が「どうぞ」と答えた。
そして晴美ちゃんが眼鏡を試着して鏡を覗き込んだ。
「ああ!ご自分を見てはいけません!」と言う店長の声が聞こえたが既に遅く、晴美ちゃんは「オタクキモっ」と言っている。


「私は私に何を言うっ!」


「ご自分を色眼鏡で見ればそうなります」と店長が言う。
が「色眼鏡怖っ」と小さく漏らすと、可符香ちゃんが「これちゃんに似合いますよ」と言ってさっとに眼鏡をかけて鏡の前に移動させられる。
急なことに対応できず、そのままは鏡に移った自分と目が合う。


「このタラシがっ」


「ひぃっ!」と思わず声が出る、まさか世間にそういう色眼鏡で見られてたなんて!


「タラシじゃなくて、愛がたくさんあるって言ってください!」
さん、フォローになってませんよ・・・」


そう叫んで落ち込んだの肩をポンっと叩いて糸色先生がほほ笑んだ。
苦笑いだったけど、天使の微笑みに見えました!


「ん?色眼鏡じゃないのも置いてある」


先生に慰められていると、奈美ちゃんの声が聞こえてそちらを向くとヘッドホンが置いてあった。
「色ヘッドホンは聴くものに対して偏見が入るものです」と店長が説明する。
すると千里ちゃんが「どれ。」と言って色ヘッドホンを掴み芽瑠ちゃんにつけた。
芽瑠ちゃんが差し出した携帯の画面には「ロックは不良のきく音楽だ」という文字が打たれていた。
たしかに音に対する偏見ってあると思うけど・・・。
その他にも「色マウスピース」という、味覚に対して先入観が入るものもあった。


「こんな店でわざわざ買わなくとも、もう皆さんかかってるんじゃないですか?色眼鏡」


そう言った店長はたちを見渡して「私には見えますが」と続けた。


『そう・・・今、たちは偏見という色眼鏡を外さないといけないんだ』

「先生、どう見てもそっち系です」


どう見ても男性が好きそうな男性に先生がつかまっていた。
「それはさんが色眼鏡で見てるからだよ」と先生は言うが、服の中に手を入れられているじゃありませんか!


「糸色先生に手を出さないでください、のです!」


そう言っては先生の手を引っ張って、その場から逃げ出したのだった。
あぁ、色眼鏡って加減が難しい・・・。