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「鬼はー外ーっ!」
「福はーうちーっ!」 それぞれが豆を掴んで、鬼に向かってそれを投げる。 今日は節分の日。 も例外ではなく、鬼に向かってお決まりのセリフを言い、豆を投げた。 至近距離から。 「ちょっ!さん、至近距離からの攻撃はやめてください!痛いですから!」 鬼のお面をかぶった糸色先生は、非難の声を上げてたちが放つ豆から逃げて行った。 「追い出された鬼はどこへ行くんでしょうね」 学校の外まで出てきていた先生はお面を外して佇んでいる。 どうしたんだろう、と思って声をかけようとしたら先生が意味深なことを言った。 「は?」と千里ちゃんが言ったので、「鬼が島?」と思ったことを口にした。 あっ、先生の首筋に赤いあとがたくさん付いている! なんてエロス!! 「さん、実際ないでしょ、そんなとこ」 「行き先のなくなった鬼は生きるためにしかたなく犯罪に手を染め、闇社会に飲み込まれていくしかありません」と先生は続ける。 まさか、そこまで鬼の事情が変わってしまうなんて・・・。 先生の深刻な発言に、先ほどまで「エロス!」と思いながら小さくガッツポーズしていた手から力が抜けていった。 「人は無責任に追い出しますが、その後の事も考えてあげないと!」 「はぁ。」 「鬼以外でも最近やたらと追い出される」 先生は「年俸の高いスポーツ選手を追い出したり、伝統芸能の世界を追い出されたり」と例を挙げていって、「彼らのセカンドキャリアも考えてあげないと!」と語った。 「なんか、興ざめ。」 「帰ろうか」 楽しかった節分の気分から一転して、素直に豆まきが出来なくなってしまった。 千里ちゃんや奈美ちゃんが、先生に背を向けて歩き出した。 はどうしたものかと思って先生を見ると、あびるちゃんがパチンコの玉を投げつけているので慌てて声をかけた。 「えっちょっと、あびるちゃん!?」 それはさすがに痛いって・・・。 だんだんと太陽が沈んできた頃、は一人で帰路に着いていた。 すると、「うなああああ」と言う叫び声が聞こえた。 こっこれは千里ちゃんの声! は慌ててその声のした方へ向かった。 現場に到着すると千里ちゃんが呆然と立っているのが見えて「千里ちゃん!」と声をかけながら傍まで駆け寄ると、千里ちゃんの視線の先にたくさんの鬼たちが! が思わず「うわぁ!」と声をあげると、糸色先生とみんなが駆け付けた。 「さんまでっ!?どうしました!?」 「みんなが『鬼は外』したせいで、大量の野良鬼が発生してるんです!」 千里ちゃんはそう言って、目の前を指差した。 そこには、行き場所を失ってゴミ箱を漁る鬼たちが居た! 「ほーら見た事ですか!人間の勝手な都合で追い出すからです!」と先生は言って左手での右手を掴み、右側に千里ちゃんを誘導してその場を後にした。 「さぁ危険だからこちらへ!あとは保健所が何とかします!」 「保健所につかまった鬼はどうなるの?」 走りながらそう言った先生に千里ちゃんが不安そうに聞いた。 先生は少しの沈黙の後に、「知らない方がいいです」と静かに言った。 その言葉で、鬼たちに起こる事がわかってしまいは思わず先生と繋いでいる手に力を込めてしまった。 すると先生はぎゅっと手を握って、こちらを見てを安心させるように少し笑った。 その後、たちは先生に家まで送ってもらったのだが、はやっぱり鬼のことが気になってしまって家を飛び出した。 糸色先生の居るであろう学校へ向かう途中にも野良鬼と何度かすれ違った。 その度に、彼らが不憫でかわいそうだと思った。 学校に着き、宿直室の戸を開けようとすると「わー!」と言う交くんの声が聞こえたので勢いよく戸を開けた。 するとそこには押入れに狭そうに体を丸めて入っている鬼が! 先生は押入れを開けたままの状態で少し固まっていた。 「ダメじゃないですか!野良鬼拾ってきちゃ!」 「ちゃんと世話するから!」と必至に頼む交くんだが「そーゆう問題じゃない!うちじゃ鬼は飼えませんから!」と先生も必至で止めにかかる。 「むやみに追い出すから、こんなことに・・・」 「さん!危ないから家にいて下さいって言ったじゃないですか!!」 「すいません、でも野良鬼が心配で」 がそう言うと先生はため息をついたが「無事なら良いですよ」と言って笑ってくれた。 「ん?てことはまさか、鬼以外にも?」 先生が少し考えるようにつぶやくと、戸が開いて奈美ちゃんが顔を出した。 「先生ん所で飼えないかな?」 困った様子でそう言った奈美ちゃんの横には、野球のユニフォームを着た人が・・・。 「野良プロ野球選手!?」 「ダメじゃないですか、拾ってきちゃあ!」と先ほどを同じように先生が声をあげる。 すると奈美ちゃんは「うちマンションだからプロ野球選手飼うの禁止なんです」と言った。 「うちでも飼えませんから!」と先生が反論する、奈美ちゃん多分どこでも飼えないよ・・・。 そう思っていると、あびるちゃんが来て「先生ん所で飼えないかな?」と見たことのあるおじさんを連れてきた。 「クーデターで国を追い出された野良首相!ダメじゃないですか、拾ってきちゃあ!」 「先生ん所で飼えないかな?」とその後、晴美ちゃんたちが来て色々な野良の人を連れてきた。 すると可符香ちゃんも「先生ん所で飼えないかな?」と言って、野良人を紹介する。 「野良教団!?」 「あちこちで追い出されちゃって」と可符香ちゃんは言うが、そりゃそうだよ・・・。 「うちじゃ飼えません!公安来ちゃうでしょ!」と先生も受け入れを拒否した。 「絶望した!私のような小心者にしわ寄せがくる、「鬼は外」社会に絶望した!」 「みなさん早く出て行って下さい!」と先生が言うとマリアちゃんが「マリア、この国という受け入れ先あったカラ、生きてコレたヨ」と言った。 どうやら先生はその言葉に感動してしまったようで「私が間違ってました、全力でこの野良人たちの受け入れ先を探します!」と意気込んでいる。 するとまといちゃんが「残念ながらそれどころではありません」と言って先生を職員室に促した。 そこには、「解雇通知」が! 「解雇っ!?」 「あやしげな人たちと同居しているのがばれたんじゃぁ・・・」 「慈善行為じゃないですか!」 「ってことはもしかして先生、野良教師」 可符香ちゃんの言った一言に先生は慌てて受け入れ先を探しに行ってしまった。 「えーそれでは授業を始めます」 「ていうか、なぜあなた達いるのですか?」と教卓に立った先生が聞いてくる、その問に「なんとなく」と千里ちゃんが返した。 やっぱり先生の生徒はたちじゃなくちゃ、でもここ相当寒いです。 すると「やっぱり廃校が決まりました」と校長先生が防寒着をしっかり着ていった。 「野良教師に逆戻りは嫌だあ!」と叫びながら先生は氷河の上を駆け抜けていってしまった。 「嵐がきます、ここは危険です!」 「でも、まだ糸色先生がっ!」 「もう待てない早く乗って!」 「ちゃん、早く乗らなきゃ!」 荒れ狂う海の中、たちは先生を置いてその場を後にするしかなかった。 糸色先生、無事でいてくださいっ! 数日後。 たちは先生を探しに、戻ってきた。 呼びかけるが、先生の声がしない。 「生きてるわけないよ、あの厳しい嵐の中じゃ」と奈美ちゃんが言ったのでも諦めかけていた。 涙が出てきたが、すぐに凍ってしまった・・・もう駄目かもしれない。 そう思っていると、遠くから「ワオーン」と声が聞こえた。 声のする方を見ると何かがこっちに近づいてきていた。 「先生!」 それは糸式先生だった。 一番に先生に駆け寄って、先生に抱きついた。 あぁ、よかった! そして千里ちゃんたちも追いついて「よーしよしよし」と先生をなでる。 「南極物語かよ!」と奈美ちゃんがつっこんでいたが、とりあえず先生が生きていて良かった!! その後、野生化してしまった先生を元に戻すのにつらくも楽しい調教がしばらく続いたのだった。 |