新年も明け、冬休みが終わってまた学校が始まった。
今日は朝から雪が降ってる。
がコートを着てマフラーと手袋をして家を出ると、同じような格好をした学生を大勢見かけた。
今日何かあっただろうか?とその風景を疑問に思ったが、前方にきれいな黒髪の女子学生が歩いているに気づいたので、考えるのはそこでやめてしまった。


「千里ちゃん!おはよう」
「あら、さん。おはよう」


その後ろ姿に近づいて声をかけるとやはり千里ちゃんだった。
たちは並んで歩いて学校へ向う。
その途中で千里ちゃんが「受験生のみなさん、頑張ってください」と学生に声をかけていた。
「そういえば今日受験だったね」と朝から大勢見かけた学生の謎が解け、声に出すと「受験たっていろいろありますよ」と糸色先生が声がした。
その声に二人して振り向くと、やっぱり先生がコートとマフラーを身につけて立っていた。
先生のコートとマフラー姿は何か可愛いので好きです!


「世の中そんなに頑張らなくてもいい――倍率一倍以下の受験もあるのです!」
「倍率一倍以下の受験?」
「千里ちゃん、定員割れのことじゃないかな?」


先生が意味深なことを言うので、千里ちゃんとその内容を考える。
すると先生は「さん、高校や大学受験に限らず一倍以下受験は世にあふれているんですよ」と視線をずらして言った。


「募集定員5名のところ、一名しか応募のなかった入社試験とか!県内に競技人口が一人しかいない、代表選考会とか!そんなちょっとせつない一倍以下受験」


「一倍以下ブーム到来!」と言う先生に千里ちゃんが「ブームとか、言うな」と言った。
「受験に限らず一倍以下の競争は世の中に多いのです」と先生は言って「あれなんかもそうですね」と本屋を指差した。
そこには『米田治先生サイン会』の文字が。
店頭に立って店員さんが「整理券を配布します」と言っても誰も見向きもしない。
するとあびるちゃんが通りかかって店員さんが「もらってやってもらえませんか」と弱気に券を差し出すが「いりません」とあっさりと断られてしまっている。


「せつね」
「せつないですね・・・」
「絶望した!一倍以下の競争に絶望した!」
「みんな一倍以下の受験生なんかじゃありませんよ、争い事の嫌いな平和主義者さんですよ」


先生が絶望していると可符香ちゃんが現われてそう言った。
「敗者を作らない生き方、それが一倍以下受験です」と可符香ちゃんが言うと「敗者を作らない生き方・・・」と先生がなにやら興味を示した様子。


「たしかにそれは尊い生き方かもしれませんね」
「先生、言いくるめまれてません?」
さん、私は間違っていたのかもしれません。一倍以下受験に絶望するなんて」


「教育者ならむしろ一倍以下受験を推奨すべきでした!」と先生は意気込んで学校へ向かっていったので、たちも後を追って学校へ向かった。

学校へ入ってからは普通に授業が行われた。
千里ちゃんに「あれ何だったんだろうね」と今朝の先生のことを言うと「さぁ?」とやはり千里ちゃんにもわからないようだった。
お昼休みに晴美ちゃんが「本返しに行ってくる」と言うので暇だったと千里ちゃんも一緒について行くことにした。


「久藤くんかっこいいよね」
「でも競争率高いよぉ」


図書室に入ると女生徒が本を読んでいる久藤くんを見ながら話をしているのが聞こえた。
久藤くんって人気あるんだなぁと思っていると糸色先生が女の子たちに「君の恋が実れば敗者がでます、もしくは君が敗者です」と声をかけている。


「競争率一倍以下の恋をしませんか?」


そう言った先生が「紹介します」と言うと本棚の影から3人の男子生徒が現れた。
・・・的には3人とも範囲外だ。
「どれでも好きな男性を!」と先生は女の子に薦めるが「そう言われましても!」と女の子も困っている。
糸色先生、何やってるんですか・・・。
一倍以下の恋を薦めるのに失敗してしまった先生はあたりを見渡した。
するとたちに気がついたようでこっちを見た。


「悪いですけど私は、競争率高いですよ。幾人もの殿方から告白される日々!」
「そう、なんですか」
「えぇ!晴美ちゃんそうだったの!?という人が居ながら!」
「アニメやゲームでの話ですよ。さん、悪ノリしないで」


千里ちゃんに怒られてしまった。
「それじゃ私が妄想世界の住人みたいじゃない!」と晴美ちゃんが千里ちゃんに言うと「その通りじゃない。」と冷静につっこまれていた。

「では、藤吉さん以外の方は・・・」と先生は言いかけてと見て止まった。


「・・・さんは定員ぴったりですから、木津さんは?」
ちゃん、恋人いたの?」


先生の発言を晴美ちゃんが疑問に思ったらしくに聞いてくる。
糸色先生と付き合っていることは何となく言ってなかっただけだから言ってもいいのかな?


ちゃんは競争率高いですよ」


その声のする方を見ると可符香ちゃんがいた。
可符香ちゃんは隣に女の子を連れている。
「恥ずかしがらずに、行ってらっしゃい」と可符香ちゃんが女の子に声をかけた。
すると女の子は顔を赤らめながらまっすぐにに向かって歩いてきた。


「あの、先輩!こ、これ・・・受け取ってください!!」


そう言って女の子は手作りだと思われるクッキーが入っている袋を差し出した。
「ありがとう、とっても嬉しいよ」とが答えると顔を赤くして去って行った。


ちゃんは男の子にも女の子にも、もてるので通常の2倍の倍率です」
さん・・・なんだったんですか、今の?」
「前に口説いていた女の子ですね、名前は智香ちゃんです」
「そういうことを聞いてるんではなくて・・・はぁ、勝ち抜いても大変ですね」


先生はため息をつきながら遠くを見た。
どうしたんだろう、と思っていると「オレ、何か部活入ろうと思うんだけど」と言う男子生徒たちの声が聞こえた。


「一倍以下の部活をしませんか?」


先生は男子生徒にそう声をかけると「6人しかいない野球部です」と野球部を紹介する。
それ、多分同好会ですよね?
それから先生はいろいろな一倍以下の倍率のものを紹介していった。


「あぁ、ステキな競争率一倍以下ライフ!」


とギターを弾きながら歌を歌いだした。
先生が歌ってるの初めて聞いたけど、かわいいなぁ。
このまま歌聞いていよう。


「一倍以下ライフ!」


声がした方を見ると珍しく臼井くんが見えていた。
彼はどうやら生徒会長に立候補するらしい、他に候補者が居ないので普通に行けば当選するはずだ。
しかし、結果は不信任が多数で落選だった・・・。


「競争率一倍ですら落ちる始末!」


それを見ていた先生「やっぱり絶望した!一倍以下の競争にすら敗者を作る社会に絶望した!」とまた歌を歌いだした。
折角だから携帯の動画で撮っておきました。

「先生って倍率高いですよね」
「そうですかね?」
「そうですよ、頑張りますからね!」
さん・・・まずは女の子を口説くのやめましょうね、普通の倍率にすることから始めて下さい!」


糸色先生はそう言っての手を両手で強く握ってブンブンと振った。
何だかよくわからなかったけど、先生のお願いなら喜んで聞きます!


「はい、極力努力します!」
「・・・(心配だなぁ)」