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『あけましておめでとうございます』
たちは宿直室に集合していた。 今日は年が明けたばかりの1月1日。 皆で振袖を着て先生のところに行こうと誰かが言っていたので、特に時間の指定はしなくても皆が集まっていた。 新年早々皆の振袖姿が見られるなんてラッキーだなぁと皆の姿に見惚れながら思っていた。 一応も振袖来てるんだけど、孫にも衣装ってこのことですよ。 「明けたからって何もめでたいことありませんってば」 「そんな事言ったら、交くん、かわいそうでしょ。」 「お姉ちゃんたちと、遊びましょう。」と千里ちゃんが言うと、「私とすごろくしようか?」と奈美ちゃんが聞き、その他の皆も各々交くんを誘う。 はと言うと、皆が交んを誘っているのに「やりたいっ!」と挙手をしていた。 「全部やりたいっ!」 「ちゃんは何も持って来なかったの?」 「うん、カメラならあるんだけど」 独りテンションの高いにあびるちゃんがたずねる。 だって、遊ぶもの用意するなんて聞いてなかったのだ。 それには皆の振袖姿を写真に撮ることしか考えてなかったので、持ち物は財布と携帯電話と使い捨てカメラだけだった。 「やらないよ、そんな子供だまし」 皆の持ってきた物を一通り見て交くんがそう言った。 交くんは、子供扱いされるのが嫌なようだ。 「子供だましならまだいい」 そんな様子を見て糸色先生がそう言った。 「世の中にはもっと恐ろしい、大人だましがあるのですよ!」 「大人だまし?」 そう言った先生が何だかかっこよくて、写真を一枚撮る。 そして大人だましとは何か聞き返した。 「さん、大人もしょちゅうだまされるんですよ」 「写真撮らないで下さい」と先生は続けて言った。 「大人だまし?それならやってみたい!」 交くんが「大人だまし」をやって見たい、と目を輝かせて言った。 すると先生は「いいでしょう、ついて来なさい」とマフラーとコートを身に付け学校を後にした。 「社会見学です、大人だましを見せてあげましょう」と言う先生と、その後を続いて歩く交くんの後ろをたちも歩いていた。 だって、何だか心配で・・・。 しばらくして「クラブオトナ」という店に先生が入っていった。 たちはドアの隙間から中の様子をのぞいた。 「お客さん犬派?猫派?」 「こないだ小泉コータロー来たよぉ」 お世辞にも綺麗とは言えない水着姿(?)のお姉さんの間に座って先生は喋らないし、動かない。 目を泳がせている様子は確認出来た。 先生が無言で出てくると「今のが?」と交くんが聞いた。 すると先生は「女の子が横に座ってどーでもいい話されて、ちょっと飲んでお会計がウン万円」と言って「大人だましですよ!」と叫んだ。 「しかもぼったくりバーでもなんでもない、ごく普通のお店でです!」 「・・・むしろ大人たちは進んで騙されに行ってるような気がしますけど」 「そうなんですよ、さん。さっきのお店で大人だましをしかけたお姉さんもまた、大人だましにあうのです」 先生がそう言って向かいのお店に視線を移した。 たちもそちらを見ると、さっきの店のお姉さんがホストと待ち合わせをしていた。 するとホストは現金を手にして、ブランド物の鞄を買おうとしている。 「ブランド名がついただけで、たかがバックが100万ですよ」と先生は言って「立派な大人だましですよ!」と言った。 「だました側がだまされ、だまされた側もだます堂々めぐり!」 「先生、だまされるといえば・・・今そこで『だまし絵展』やってますよ」 「だまし絵?」 可符香ちゃんがそう言って、百貨店を指差した。 そしてたちは中に入ってだまし絵を見学することになった。 「だまし絵といえばエッシャーのだまし絵が有名ですが」と先生が言うと可符香ちゃんは「エッシャーさんのはないんですが――他の様々なだまし絵が展示してあります」とたちを率いて会場内を歩く。 「この絵は」 「題名『年金制度』です」 一枚の絵の前で先生が止まって、可符香ちゃんに説明を仰ぐと「だまされているでしょう、みんな」と返された。 「そういう『だまし絵』なの!?」 とが聞くと「そうですよ」と笑顔で返されてしまった。 その後も様々な『だまし絵』を見学していき、先生は危うく絵を高額で買わされてしまうところだった。 「恐ろしいでしょ、大人だましは」 「う・・・うん」 たくさんの大人だましを見て、交くんはちょっと引き気味だった。 「しかし子供だましだからといって安心は出来ないのです」 だまし絵展を後にし、たちは屋上に向かった。 するとそこでは戦隊もののショーの真っ最中だった。 「あれをご覧なさい」と先生が言うので、ショーを見てみるがショーよりも観客が気になってしまった。 「子供だましのつもりがいつの間にか大人だましに!」 子供の観客が多いかと思いきや、男性の観客が多かった。 みなさんヲタクの方々ですか? 「大人の方が夢中に・・・」とがつぶやくと「あえてだまされにいっているのです」と隣のクラスの万世橋くんが現れて言った。 万世橋くんも来てたんだ・・・余計にテンションが下がりました。 その後、百貨店を後にしたたちは羽根突きをしている千里ちゃんたちと遭遇した。 すると千里ちゃんの足元に何かが落ちているのに気づいた。 糸色先生もそれに気づいたようで、立ち止まっている。 あれは・・・言ってはいけない物が落ちている! 先生と顔を見合わせて「あえてだまされておきましょう!」ということになった。 「怖いから?」と可符香ちゃんが聞いているが、まったくその通りなので何も言えない。 千里ちゃん・・・たまに怖いから、ね。 でも千里ちゃんはだましているつもりでも、たちはあえてだまされている振りをしてるんだからこっちも何だか悪い気が・・・でもやっぱり怖いのでスルーしますが。 「あまりに辛い現実が多いからあえてだまされにいく――それが大人のたしなみではないでしょうか!」 そう言って先生はあえてだまされにいっていた。 そのせいで詐欺にもあって、ケツの毛まで抜かれてしまったそうです。 「えっ、本当ですか?」とカメラを構えて先生に詰め寄ったけど、「やめてくださいっ!」と思いっきり拒否された。 「もうこれ以上だまされない!だまされるものですか!」 そう意気込む先生に見知らぬ男性が声をかける。 「社会全体を疑うのです!現実世界そのものが嘘なのです!」と説く男と大勢の人々。 その中に糸色先生も混ざって国会議事堂に攻め込もうとしたと後から聞きました。 先生何やってるんですか!! 「だまされまい、だまされまいとするあまりに他でだまされる――悪質な大人だましにご注意を」 「可符香ちゃん!それ見えないところでやり取りして!!あえてだまれてあげれないよ、それは!!」 謎の男性から多額の現金を受け取る可符香ちゃんを目撃してしまったは思わず、声をあげてしまったのでした・・・。 |