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学校の帰り道、皆で歩いていると 「番号ポータビリティ」と言う言葉がいくつも並んでいた。 「あんまり興味ないなぁ」 「正直ユーザーと温度差あるよね」 「たしかに、メーカーだけ勇んでいる感じするわね。」 がつぶやくと奈美ちゃんと千里ちゃんがそれに続いた。 「番号ポータビリティ制度?」 「先生、他の会社に番号そのまま持ち越せるんですよ」 背後から糸色先生の声がして振り向くと、マフラーをした先生が居た。 先生、マフラー似合うなぁ可愛い。 「そんなの今に始まった事じゃないじゃないですか」と先生は言って「世の中いろいろ、持ち越されてしまう」と意味深なことを言った。 「あっ!久しぶり!」 「あっ、なみ平!!じゃない」 奈美ちゃんの声がしてそちらを向くと、女の子が近づいて来ていた。 どうやら友達らしく奈美ちゃんに気づいて「なみ平」と呼んだ。 「なみ平?」と思わず口にすると先生が「昔のアダ名でしょう」と言った。 「小学校の時に付けられたアダ名が持ち越され、ひいては社会に出てからも同じアダ名で呼ばれる!」 「アダ名ポータビリティ制度です」と言う先生に千里ちゃんが「たしかに、当時のアダ名で呼ばれて、びっくりする事あるけど」と言った。 が「千里ちゃんはどんなアダ名だったの?」と聞くと彼女は少し黙り込んだ、すると先生が「いいです、言わないで!言うなあ!」と叫んだ。 「ちなみにさんのアダ名は?」 「ですか?え〜と、小学校のときは『くん』とか『くん』って君付けされてましたね。主に女子に」 「何でです?」 「今とやってることは一緒でしたよ、女の子口説いたりしてたので。髪が短かったので男の子と間違われてたんですかね?」 「・・・そうですか」 「あれなんかもそうですね」と先生は通りすがりの少年を見て言った。 「いじめられて転校して心機一転をはかるも、やっぱり同じ立ち位置に!」と先生が言ったことが簡単に想像できる。 「立ち位置ポータビリティ制度です」と先生は言い「あれもそうですね」と様々なポータビリティ制度を挙げていく。 「あのカップル実はとっくに別れているんですよ」 「元カレと元カノって事?」 先生が指差す方と見ると一組の男女がいた。 奈美ちゃんが答えを促すと「まぁ・・・でも一部関係は持ち越しているんですよ」と先生は言いにくそうに口を開いた。 そして「ね」と念を押してから「つまり肉体関係ポータビリティです」と言った。 奈美ちゃんは「下品です!」と叫んでいる。 は「先生グッジョブ!」と言う意味を込めて親指を立てた。 しかし「ちゃんも下品だよ!」と奈美ちゃんに注意されてしまった。 「下品なのはこの制度です!」 先生はそう言って「世の中、ほっといてもいろいろ持ち越されてしまうのです」と例を挙げていった。 「もう新しい自分に生まれ変わることすらできない!絶望した!再チャレンジできない国、日本に絶望した!」 絶望している先生は「これ以上何も持ち越したくないのです!」と言った。 すると可符香ちゃんが「でも、いいものですよ、持ち越せるのは」と言ってあびるちゃんに視線を移す。 「おかげで犯罪の解決にも役立ちました」と言うので一体なんだろうと思っているとあびるちゃんが左目を露にした。 「この目が覚えていたんです、前の持ち主をひいた車のナンバーを」 「たしかにそんな都市伝説ありますが!怖いからっ!」 「残像ポータビリティですよぉ」と言うあびるちゃんには「可愛らしく言っても怖いよ!」と言ってしまった。 左目、そんなことがあったのか・・・。 そんなことを思っていると、おじさんが「私は今、山田であって山田でない!」と演説しているのが聞こえた。 「前世の記憶ポータビリティですよ」 と可符香ちゃんが言ったが、先生が「持ち越しすぎですから!」と言っている。 しかし「現世の私の忌々しい記憶も来世へ?」と心配そうに言って「持ち越したくありません!」と叫んでいる。 現世が余程嫌なんだなぁと思ってしまった。 「来世くらい、一から始めたいです!」 「漫画界にも古より伝わる、ポータビリティ制度があるのです」 可符香ちゃんはそう言うと「えいっ!」と可愛い声で先生の背中を押した。 すると前に居た千里ちゃんに倒れこみ、2人は運悪く階段を転げ落ちていく! 「先生っ!」と声を上げ腕を伸ばすが届かず、2人はゴロゴロと階段を転がっていきゴッと頭をぶつけてしまった。 「大丈夫ですか!?」 「いててて。」 「いたたた」 2人に駆け寄るとそれぞれが頭を抑えている。 そして2人は顔を上げると「ん」とお互いを見て「あ」っ声をあげた。 「どうしたんですか?」と2人に声をかけるが「男女の中身が入れ替わる、人格ポータビリティですよ!」と可符香ちゃんが答えた。 中身が入れ替わる・・・? ってことは、先生の中に千里ちゃん!千里ちゃんの中に先生!? 「きっちりしないと!」と先生は叫ぶと前髪をきっちり真ん中分けにした。 うわぁ!何ですかそれ、可愛い!! がちょっと興奮していると千里ちゃんが「貧相な女体に絶望した!」と叫んだ・・・先生、何言ってるんですか! しかし、千里ちゃんが鏡を取り出して自分を見ると「入れ替わってなんかないわよ」と言うが先生は入れ替わっている気満々らしく、すっかり千里ちゃんになりきっている。 そして勝手な理想の男性を言って千里ちゃんに怒られた。 千里ちゃんはバットで先生を殴ったのだが、先生は前に居たカエレちゃんを巻き込んで倒れ、偶然カエレちゃんの近くに居たは彼女に咄嗟に服を掴まれて2人と一緒に階段を落ちていってしまった! ゴロゴロゴロ、ゴッ! 「訴えてやる!」 「いたたたた」 「和を持ってよしとする木村楓でございます」 ん? 上からカエレちゃん、糸色先生、が発した言葉だが、は「いたたたた」と言ったはずなのに・・・。 あたりを見渡すと自分が目の前に居て、「木村楓でございます」と言っている。 慌てて服を見ると袴が目に入ってきた・・・つまりは糸色先生の中に入っている? 「やったー!何か美味しい展開に!!」 「ちょっとさん!私に変なことしないで下さいよ!!」と頭上から声がし、見上げると半透明の先生が浮かんでいた。 「帰る場所がなくなってしまった!」と叫んでいる先生に可符香ちゃんが「大丈夫ですよ」と微笑んだ。 その後近未来のボディを手に入れた先生だったが、やはり元に戻ろうという話しになってたちは同じ階段からまた転げ落ちた。 お決まりの戻り方で、それぞれ頭をぶつけて無事にたちは元に戻ることが出来た。 「さん、私に何か変なことしてませんよね」 「何言ってるんですか、はさっきまで何も出来ないように縛られてたじゃないですか!先生がそうしろって皆に言ってたのに」 「すみません・・・何故か身の危険を感じたもので」 無事に元に戻り、いつも通りの会話が出来ることが嬉しくて笑っていたら、先生が「何が楽しいんですか?」と聞いてくるので「またちゃんと糸色先生と面と向かって話せて嬉しいんです」と答えた。 すると先生も笑って「そうですね、自分と会話するのって変な感じでした。さんはさんのままが一番ですね」と言った。 は先生と一緒に過ごしたことを来世でも覚えていたいなぁと空を見上げながら思った。 |