学校の帰り道、商店街を通りかかったら前方に糸色先生と晴美ちゃんが見えた。
何か紙を見ながら話をしているようだ。
声をかけようと近づいていくと先生が「絶対無理ですから!」と言ってその場から去っていってしまった。


「あ、ちゃん」
「先生どうしたの?」


晴美ちゃんに聞くと「ハロウィンパーティーに誘ったんだけど、無理だって」と残念そうに言った。
は晴美ちゃんが差し出したプリントを見て思わず「コスプレ祭って書いてあるけど」と言ってしまった。


「え?ハロウィンってコスプレする日でしょ」
「・・・文化の違いを感じる」
ちゃんも一緒に参加しようよ!衣装はこっちで用意するから」


「えっいや、え?」と言っているうちに彼女に強引に手を引かれてはこの街を後にした。

太陽が空をオレンジ色に染め上げる夕暮れ。
の周りには大勢の人が居る。
もちろん晴美ちゃんも一緒だ、彼女は某ガンダムの制服を着ている。


「あっ先生、ようこそ」


と晴美ちゃんが言ったのでその視線の先を見ると、かぼちゃを被った袴姿の人が居た――糸色先生だ。


「みなさんそのカッコは?」


先生がそう尋ねたくなるの当然だ。
某鬼娘や某セーラー戦士などのコスプレをした人しか居ないのだ。
本来のハロウィンの定番であるジャック・オー・ランタンの方が浮いている。
「ハロウィンに決まってるじゃないですか」と自信満々に言った晴美ちゃんにちょっと引いてしまった。
そんなことを思っていると糸色先生がに気づいたようで指を指して「さん!?」と叫んだ。


「はい、ですけど」
「その格好は?」
「先生、ちゃん可愛いでしょう!」


先生がを上から下まで見た。
が着ているのはメイド服だった。
晴美ちゃんが言うにいは某アニメキャラが着ているメイド服らしく、そのキャラにあわせたカツラを被っている。


「可愛いですけど・・・それっもはや原型留めてませんよね」
「各人思い思いの仮装をするのがハロウィンですから」
「これは晴美ちゃんの思惑ですけどね」


がスカートの裾を摘まんでそう言うと「可愛いからいいじゃない」と晴美ちゃんに流されてしまった。
その後「ディア×イザ、オア、イザ×ディア?」と晴美ちゃんが言うのに対して彼女と同じ格好をした子たちが「両方いたずらじゃん」などと言っているのを先生と聞いていた。


「え?両方いたずらなの??」
さん、反応しなくていいです」


盛り上がっている彼女たちと距離を取って居ると「先生たちが困惑するのはもっともです」と声がし、そちらを向くと魔女の格好をした千里ちゃんが居た。
「彼らによるただのマンガ・アニメのコスプレイベントと化しているのです。」と彼女は言い「私はきちんと、元々のハロウィンの仮装の枠を、守ってますが。魔女なんで。」と言うと先生が「そう・・・なんですか」と残念そうに言った。
千里ちゃんの格好・・・元祖魔女っ子少女ですよね?
可愛いのでスルーしておく。


「でも考えてみると今の世の中、原型を留めてない事って多いですよね」


原型を留めていないものの例を挙げて先生は「原型を留めないものたちに絶望した!」と叫んだ。
すると突然もわもやと霧のようなものが出てきた。
「良く見えませんね」と先生に言うと「こっち行きましょうか」と先を進む。
しかし「どうやら道に迷ってしまったようです」と先生が言い、ずっと背後を付いて来ていたまといちゃんがすっと前に出て「こっちです」と林の方を指した。


「ここは?」
「各業界の原型を留めぬハロウィンが催されているのです」


まといちゃんの案内で進むとキャンプファイヤーをしている人たちが見えた。
そこで漫画業界の人たちが会議を行っている。
――それってもはや、原型留めてませんよね――


「先生、こっちにも人が」
「おっ、ちゃんとハロウィンじゃないですか」


先生がそう言いったときにお化けの格好をした人たちの行列の一人が振り向いた。
・・・原型留めてませんよね。
その後、インドカレーに絶望しているインドの人に会ったりしていると「原型留めてないじゃなくて、むしろ進化してるんですよ」と突然現れた可愛い女の子が言った。
あれ?この声って・・・。


「可符香ちゃんだよね?」
「イメチェンしてみました」


やっぱり可符香ちゃんだった!
その可愛らしい声でわかったんだよ!!
が喜んでいると「原型留め過ぎているのも問題ですよ」と可符香ちゃんが『CACAO99%』を達に渡した。


「苦っ!」


手渡されたチョコレートを一口食べると、先生もも「苦い!」と叫んでいた。
「限りなく原型に近いチョコレートです」と可愛い笑顔で言った。
そして原型を留め過ぎているものを挙げていった。
その例、全部何か嫌だなぁ・・・。


「それでも私は、原型を留めないものを良しとしません!」


と糸色先生は叫びながら走り去って行ってしまった。
えっ・・・あの〜先生?どちらに??

それからしばらくして糸色先生を見つけた。
「糸色先生、大丈夫でした?」と声をかけると何だか疲れた様子で「えぇまぁ」と返事をした。


「先生!Trick or treat!!」
「えっ・・・今私何ももってないんですが」
「じゃぁ悪戯決定ですね!先生、目をつぶってください」


そう言って先生が不思議そうに目を閉じた。
そしては先生に近づいて背伸びをする。
厚底のブーツでよかったと思う、晴美ちゃんに感謝だな。
目をつぶっている先生が可愛かった、は顔を段々と近づけていき先生の唇にキスをした。


「なっ!さん!?」


先生が驚いて目を開け、を見て顔を赤くした。
その様子が可愛らしくて笑っていると「・・・お菓子持ってたらどうなったんです?」と聞いてきた。


「お菓子くれても悪戯してました」


「結局悪戯じゃなですか」と先生が笑っていた。
――ハッピーハロウィン!