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「やぁ、偶然だね」
「・・・すみません、拙者急用を思い出しました」 嘘つきシンデレラ 拙者は、その場で踵を返して来た道を戻った。 「まってよ、バジルくん」 そう言って偶然道端で出会った・・・出会いたくない人が追いかけてきた。 「バジルくん、久し振りに会ったんだから一緒に食事しようよ」 「・・・残念ですが、拙者用事があるので」 拙者はそう言って歩く速度を速めた。 それでも彼女は追いかけてきた、少し困ったように笑いながら。 何故こんなことになるのか・・・。 彼女――――に出会ったのは半年以上前のこと。 任務先で紹介されたのだ、彼女は一応ボンゴレ側の人間なのだそうだ。 ボンゴレと契約をしていて、情報提供を主にしていると聞いた。 「では、私も同行しようかな、うん、そうしよう」 「・・・食事したら帰っていただけますね?」 「仕方ない、それでよしとしよう」 仕方ないのはこちらです・・・。 「君の瞳はまるでサファイアのようだね」 「寝言は寝て言ってください」 テーブルに向かい合って座っている殿がほほ笑みながらそう言った。 拙者は溜息をついて、出された料理をフォークでつついた。 行儀が悪いことはわかっているが、そんな気分だった。 「寝言でも冗談でもないんだけどな、本当にそう思うんだ」 「・・・そうですか」 彼女は拙者の目をじっと見ている。 拙者より幾つか年上な彼女はいつも何をしていても余裕が漂う大人だった。 「最近は何かと物騒だから、気をつけてね、バジルくん」 「・・・殿も、お体にお気をつけて」 「うん、最近は仕事も少なくてね、暇だよ」 「だからと言って、拙者に付きまとうのはやめてください」 「付きまとっているわけじゃないよ、偶然」 「・・・仕事で一緒になるならわかりますが、プライベートで半年間に4回も出会うなんて」 「今日で5回目だね、食事してくれたのは最初と今日の2回だった」 「拙者も暇ではないのです」 「最近物騒だからね、特にボンゴレは大変だ」 「・・・殿はどこまでご存じなのですか?」 「う〜ん・・・君のことなら何でも知ってるよ、とか言ってみたいね」 「言わなくていいです」 今はリングと匣で戦う時代だ、そんな中「ボンゴレリング」は廃棄された。 10代目の決めたことに文句を言うつもりはない、寧ろ尊敬の念を抱いている。 やはりあの方はすごい方だったのだ、強くて優しい人なのだ。 「バジルくん、これから大変だから本当に気をつけてね。君の美しい肌が傷つくところは見たくない」 「・・・気をつけます」 「これが私との最後の晩餐にならないように・・・」 そう言って彼女は少し笑った。 拙者にはその笑顔が、何故か悲しくみえた。 彼女が泣いてしまうのではないかと思った。 でも殿は、いつものように余裕のある動きで、グラスの水を飲んでいた。 (この出会いが偶然なわけないだろう?) |