彼女に初めて会ってから10年が経っている。
10年前はオレもまだまだ子供で、実は彼女と最初に何をして遊んでいたのか覚えてはいない。
今は覚えてはないが、その頃は彼女が遊びに来る度に嬉しくってはしゃいでいただろう。
今だってそうだ・・・彼女と会うのは嬉しい、だが立場が逆転した。
はオレの元に自ら来てくれなくなった。
だから今日もオレが彼女のところへ行く。


、入るよ?」
「・・・あぁランボ、久しぶりね」
「ちょっと忙しくて・・・はいコレ」
「ありがとう・・・どうぞ上がって」


に会うのは2ヶ月ぶりだ。
彼女は今アパートで一人暮らしをしている。
ボンゴレやオレと親しいを狙う奴らがいる可能性がある、しかし彼女はこのアパートに住み続けていた。
ボンゴレから屋敷に住まないか、と誘われているが断り続けている。
オレはを危険なめに合わせたくないから、正直なところボンゴレの提案を呑んで欲しい・・・今日来たのはその話をするためだった。


「この薔薇きれいね」


渡した赤い薔薇の花束をは愛おしそうに花瓶に生けた。
顔を近づけ匂いを嗅ぐ様子は、赤い薔薇に埋もれてしまったようだった。


「ランボ知ってる?今オランダでは色々な色のチューリップが売ってるんだって、虹色とか青色とか」
「青色の花なんて作れたの?」
「聞いた話だけど、オランダは色水を吸わせて思い通りの色を作っているそうよ。茎の中のどの管にその色水を流せばいいか、知ってるんだって」
「へぇ〜、でもそれって紛い物ってこと?」
「買った数日後には色は無くなってしまうって・・・。日本では遺伝子組み換えで絶対的な花、特に青色の薔薇を作りたいそうよ」
「オレもそっちの方がいいなぁ、すぐに無くなってしまうなんて・・・嫌だな」


なぜはこんな話をしたのだろう。
オレは彼女に大事な話をしなくちゃならないのに、そんな雰囲気ではなかった。


「そうだね・・・私も嫌だな、すぐに消えちゃうなんて」
?」
「ランボは大きくなったよね、前は私よりも小さかったのに今は大きいし泣き虫じゃなくなった」
「うん、10年経てばオレだって少しは変わるよ」


は背を向けていたが、声が段々と震えていていた。
何となく泣いている気がした、その細い指先は薔薇の花びらを撫でている。


「わかってるのに、わかってるのに・・・皆ちょっとだけ変わったこと。でも・・・私だけ取り残された気がして、怖いよランボ」
・・・」
「ランボや綱さんとか知ってる人が戦って傷ついてるの知ってるよ。なのに人の心配ばっかりして・・・私、ボンゴレには行かない」
「えっ・・・!?」


どうやら最初からには全てお見通しだったようだ。
オレが今日、勧誘しに来たのはバレていたんだ。
彼女がこちらに振り向いた、手には赤い薔薇を一輪持っている。
その顔は10年前の面影を残しつつ、確実に大人びた女性の顔付きになっていた。
オレだってわかってたよ、
周りの人の立場がガラッと変わって、アナタが戸惑っていたこと。
オレも感じてたよ、キミとの距離が遠くなってしまったこと。


「ここで待ってる、またランボが遊びに来てくれるの待っていたいんだ」


は明るい声で言ったが、頬にはまだ涙が流れていた。


「来るよちゃんと、の好きな花を持って、おいしいお菓子とか面白い話とかお土産に」
「うん、待ってるよ。ランボの好きな葡萄用意して待ってるよ、一緒にお菓子とか食べたり面白い話して笑おうね」


はボンゴレの屋敷に来ることはないだろう、そう報告しておこう。
それでいつか、青い薔薇を彼女にプレゼントしよう。
いつそれが出来るのかはわかららいけど、色褪せない青い薔薇を絶対に持っていくんだ。
まだオレたちは子供で、今はこんな約束しか出来ないけど絶対に守るよ。



ぎゅっと抱きしめたキミが余りにも小さくて、オレまで泣いてしまった