人なんて所詮、自分勝手な生き物だ。 思春期の子供はエロイ事ばっかり考えているに決まっている。 大人は自分の都合の良い事しか考えてないし、歳を取るにつれて人は醜く愚かになっていく。

私の特技は「愛想笑い」。 クラスメイトと話していても「出た、愛想笑い」と内心思ってしまう程、頻繁に使っている。 仲の良い友達といる時だって、これはなくてはならないものだ。 興味のない恋愛話や自分が一番かわいそうだと主張するような話はうんざりだったけど、何か反応しなくちゃいけくて私はとりあえず「笑っとけ」と自分に指令を出していた。 初対面の人と話すときなんて、なおさら! 無理やりに頬を引き上げて笑った顔にするので、頬が痙攣しているときが何度もあった。 そして、もう「愛想笑い」に疲れてしまったのだ。 無理やりに笑って話をあわせて、相手の機嫌をうかがって、段々ストレスが溜まっていく。 だからもう辞めにする。 でも、今更クラスで態度を変えると何が起こるかわからないのでそれはやめておく。 私は「初対面の人には愛想笑いをせず、本当の私で接しよう」と言う目標を立てた。 今更ながら言っておくが、私は非常に冷めた人間だ。 必殺技「愛想笑い」を繰り出していながら内心はとても穏やかで、自分の事を第三者の視点で見ているのが多い。 状況を分析するのが好きで、癖は「実況中継」をすること。 もちろん心の中で。 淡々と行われる私の中の実況中継は、とても毒を含んでいて他人に聞かせることができない。 今こうして自分の事を語っているのも、暇だから特にやることもなく癖が勝手に出てきているだけなのだ。 では、暇ついでに現在の状況を整理しよう。 私は、私服で近くの商店街に向かって歩いているはずだった。 しかし「実況中継」に気を取られて大分歩いたので町外れまで来ているが、特に予定もなく歩いていただけなので別に気にしない。 今日は曇りのち晴れという天気予報だったので、傘を持ってないし、私の所持品はポケットに入っている携帯電話と財布だけだった。 あぁ今日も暇だなと思いつつも、何か新しい出会いがあった場合は目標を達成できるようにと少し意気込んでいた。


「あの、すみません」


当てもなく歩いていると急に背後から声をかけられた。 この声は若い男の子だと瞬時に思い、その声から人物を想像する。 そして私は振り返った。 次の瞬間、私は声が出なかった。 驚いたのだ、想像をはるかに超えて男の子は美しく華奢で私の好みだった。


「あの、聞いてますか?」


振り向いた私が数秒停止していたので少年(そんなイメージ)は不思議に思い声をかけたのだった。 その声に慌てて我に戻り、言葉を発しようとしたが内心深呼吸をする。 目標を忘れずに頑張ろうと自分に言い聞かせた。


「はい、何ですか?」


微笑さえせずに、声を出すことに成功した。 私は喜んだが、少年の方はにこりと笑っているのに気づいてつられて笑ってしまいそうだったので焦った。


「並盛中学までの道をお聞きしたいのです」


少年はそう言って微笑んだ。 私は「並盛中ですか・・・はい、案内しますよ」と言って少年を引き連れて歩きだした。

少年は始終笑みを浮かべていて、とても丁寧な喋り方をした。 好印象だったので、私は少年に名前を聞かれて素直に名前を教えた。 そして少年の名前も教えてもらった、「六道骸」と言う変わった名前だった。


「すみませんでした、道案内をさせてしまって。さん、何か予定があったんじゃないんですか?」


骸くんはそう尋ねてきた。 私の横を歩く彼は、申し訳ないと言う気持ちが溢れ出ているかのように眉を下げて眉間に少し寄せている。


「今日は何も予定がないかったから、いいよ。暇潰しに歩いてただけだから」


「そうですか、そう言ってもらえると僕も気が楽です」と言って彼は「クフフ」と笑った。 そして会話はそこで終わり、私達は淡々と歩き続ける。 しばらく歩いていると骸くんが口を開いた。 私は彼のことが気になってしまい、横目でチラチラと彼を見ていたときだった。


さんはあまり笑わない方なんですね」


彼が言った言葉があまりにも意外で私の思考は一時停止した、今日は良く停止するなと復旧してから思った。 「笑わないようにしてる、愛想笑いばっかりしちゃうから」と私は答えた。 何となく彼の顔を見て言えなかったので視線は前向いている。


「おや、愛想笑いは駄目なんですか?」
「周りに合わせてる自分に疲れたから、もう辞めることにしたの」


何故彼にこんなことを喋っているのかわからなかった、言葉が軽く出て行ってしまう。


「クフフ、被害者ぶってるんですか?」


彼は先ほどまでの優しい笑みから、いやらしい笑みに変わったのを私は見逃さなかった。 「そんなつもりじゃない、ただ疲れただけ」と私はあくまで淡々と喋る。 私は彼の今までの笑みが「愛想笑い」だと気づいた、でも今の彼の方が私は好きだった。


「自分がかわいそうだとか思ってるのでは?そう思っている自分に酔っているだけですよ」


彼は自傷気味に笑った、私は進んでいた足を止める。 彼も私に気づいて足を止める、私は彼を正面から見た。


「酔ってない、惚れてる」


そう言うと彼は「クハハハハ、とんだナルシストですね」と一番の笑みを見せた。


「違う、貴方に惚れてる」


彼は笑いをやめて、私を見た。


「私、骸くんに惚れた」


「会ったばかりの僕に?」と彼は私に問いかけてきた。 私は「うん」と答えた。


「初めてみた瞬間に一目惚れした。喋ってみてすごい良い人だとおもった、けど本当はちょっと嫌な感じの人だった」


「クフフ、言ってくれますね」と彼は笑った。


「でも、嫌な感じの骸くんの方が好き。私、貴方が好きみたい」


私がそう言うと彼は「僕は貴女のこと嫌いではありませんよ」と言って歩き出した。 私はとりあえず彼の横に並んで歩いた。 「道知らないくせに、先に行ってどうするの?」と聞くと彼は「こうしては僕の横を歩いているじゃないですか」と言った。 確かにそうだ、彼に「嫌い」だと宣言されても私は彼の後を追って並盛中まで案内するだろう。 彼と一緒にいたいのだ、もっと彼のことを知りたい。


「並盛中に行ったあと、私とデートしてよ」


彼ともっと一緒にいたい、彼の好きな物は何だろう、嫌いな物はなんだろう、他にどんな表情をするだろう、きっと何をしても綺麗なんだろうな、と妄想が膨らむ。 きっと私はだらしなく顔をにやつかせているのだろう。


「いいですよ」


彼の言葉に思わず笑顔になっていた。

人なんて所詮、自分勝手な生き物だ。 思春期の子供はエロイ事と好きな子のことばかり考えているに決まっている。 大人は自分の都合の良い事しか考えてないし、歳を取るにつれて人は醜く愚かになっていく。 でもそれで良いと思った。 人生の中で自然に笑うことが何回できるか、それが今度の私の目標である。



灰色の世界を謳歌する