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「バンドやりましょう」
「遠慮します」 急に骸がそう言った。 「熱い物を触って咄嗟に手を引っ込める」などの反射のように私は咄嗟に反論した。 すると骸が意外そうな顔した。 そんな顔してもダメ、何か可愛いけどダメ。 「即答ですか」 「即答される理由があります、無理」 「そんなことありませんよ、僕たちなら不可能も可能にできます」 クフフフフ、と笑って骸は私を見ている。 そんな大げさなこと言っても無理なものは無理だ。 彼は私を煽てるのが上手いが、いつも乗せられるわけじゃない、いつもは仕方なくやってあげてるのだ。 まぁそんなことを言うと「仕方なく?笑わせますね」と軽くあしらわれるだろうけど。 そもそも何故私が彼とバンドを結成しなくてはならないのか、ってか何で急にバンドしようって言ったの? 「僕がボーカルで、は一生懸命僕を応援してください」 「私メンバーじゃないんだ、骸の応援係なんだ」 「えぇ、僕のことを熱い視線で見つめててください」 「うんわかった、なんて言うと思ってんのか糞野郎」 「急に豹変するのやめてください」と骸の笑顔が少し引きつった。 彼は少し頭がおかしいと思う、少しじゃないかもしれないが。 「バンドやりましょう」と私に声をかけたってことは、私もメンバーなのだと思った。 普通そう思うよね? 誰だってそう思うよ、一応ピアノ習ってたし「キーボードとか出来るかも」って思っちゃったよ。 なのに、応援係って何? やっぱり彼は頭がおかしいのだと私は再確認した。 「キーボードとかなら出来るもん」 「なるほど、ではそれでいきましょう」 骸も納得したのか、数回頷いた。 私が「ボーカルとキーボードで何するのよ」と聞くと「千種たちもメンバーに加えましょう」と返事があった。 う〜ん、ちょっとイメージしてみる。 千種はベースが似合ってるな、無表情で弾いてそう。 犬はドラムがいいかな、落ち着きなさそうだから体動かしてる方がいいだろう。 髑髏ちゃんはギターかな、何か似合う、萌え。 ボーカルとギターとベースとドラムとキーボードが居ればバンドっぽくなるかな。 あれ、いつの間にか楽しくなっちゃってるよ? いいかもしれない、私たちのバンド、いいかもしれない。 「ちょっといいかもね、骸」 「でしょう、では早速活動開始ですね」 そう言って私達同じ夢を見た、かっこいいバンドを作ろうって。 同じ夢を追いかけていた、はずだった― 「解散よ」 「待ってください、!キミがいないとダメなんです!」 そんな困ったような瞳で見つめてきたってダメなんだから! 私は骸を睨んだ、彼はまた意外そうな顔をした。 「ダメなの、無理なの、やっていけるはずない!」と私は指差した。 今日はメンバーが揃っての初めての練習の日だった。 骸が「形から入りましょう」と言っていたので、おしゃれしれきたのに! 「何で上半身裸に皮ジャンなの!」 骸はシルバーアクセサリーが目立つ黒の皮ジャンを着ていた。 しかも、上半身裸! それを見たとき思ったのだ、違う、私のイメージしていたバンドとは違う! 骸がおかしいのは承知だったので、仕方ないとも思った。 そして他のメンバーを見て私は気力を失った。 千種は黒い浴衣を着ていた、何故浴衣なの、何故? 犬は何故かトランクスしか身につけておらず、楽しそうにシンバルを叩き続けている。 髑髏ちゃんは学ランを着ていた、何故、せめて女子の制服でいいじゃないか! 何だこのバラバラ感、統一性のないバンドは。 せめてまともな音楽ができれば我慢できるかもしれない、そう思った。 それで「ちょっと合わせようよ」と練習曲を演奏してみた。 何故、何故楽譜と違うの!各々が好きなテンポで演奏してるし、犬は絶対適当に叩いてる。 骸なんて、この歌そんな歌詞ないからね! 勝手に歌作ってるし、変な踊りもしてるし・・・。 「解散ー!」 私は骸のマイクを奪ってそう叫んだ。 キーンって鳴ってるけど、そんなの気にしてられない。 骸は「何故ですか!解散の理由は?」と聞いてくる。 そんなの決まっている、自分たちの様子を見ればすぐわかるはずだ。 なのに骸は可愛らしく首を傾けている、その格好に似合わな過ぎる。 私はたくさん息を吸って、思いっきり吐いた。 理由は簡単!明確よ! 方向性の不一致により!
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