「また見てたねぇ」
「・・・そんなことないよ、偶々」
「へぇ、をいつ見ても黒子くんの方を見てる気がするけど?」
「偶々、ぐーぜんだよ」


「えーうそー」と言ってからかってくるのは同じマネのさくちゃんだ。 さくちゃんは帝光中バスケ部の1軍マネだ、実は私もそうだけど。 私、も恥ずかしながら1軍のマネをしている。 ただ臨時で2軍や3軍のマネもしている、こっちの方が多い気がするけどね。 正直、私はそんなに仕事が出来るわけではない。 しっかり者のさくちゃんと一緒に居るから、私もしっかりしていると思われがちだった。 サボリはしないけどさ、でも最低限のことしかできないですよ。 赤司くんには少し目をつけられているようだが、まぁ私は私のペースで与えられた仕事をするだけだ。


は何で黒子くんの居る所がすぐにわかるのかな?」
「・・・彼が、天使だから」
「始まったな、黒子くん天使説」


先ほどから会話に出てくる黒子くんとは、この地上に舞い降りた天使のことである。 「いや、普通に人間だから」とさくちゃんがツッコミを入れてくるけど無視しよう。 黒子くんに初めに気が付いたのは、彼が一人で残って練習しているときだった。 私も片付けなどしていて帰るのが遅くなった日だった。 電気のついている体育館に寄ってみると、彼が一人で練習していた。 その様子が、何だか眩しくて、私はしばらく見惚れていた。 決して上手いわけではない、でも一生懸命なその様子に私は目を奪われていた。 しばらく見ていると彼の方が私に気が付いたようだった。


「どうかしましたか?先輩」
「え、あぁ、もう鍵閉める時間になるよ少年」
「そうですか、気が付きませんでした・・・」
「ん?どうしたの?」
「黒子です、黒子テツヤです」


「少年じゃないです」と黒子くんはタオルで汗を拭きながら言った。 私は驚いて「く、黒子くん」と慌てて呼んだ。 彼のその仕種も言葉も、なんだか可愛かった。 「じゃあ私帰るからね、また明日ね」と声をかけてその場を去った。 少し早口だっただろうか?少し早足だっただろうか? 少し、顔が赤いだろうか? 心臓がいつもよりも早く脈打っているのは、気のせいではなかった。


「でもさ、がまさか年下好きとはねー」
「1つ下なだけじゃない、さくちゃんだって黄瀬くんイケメンって言ってた」
「あー黄瀬くんはね、あれは別でしょ、まぁモデルが珍しいってのはあるけど」
「なんだ、肩書が好きなのか」
「うーん、もちろん顔も性格も良いけどねぇ、付き合いたいとかじゃないよ」
「私も・・・黒子くんと付き合いたいわけじゃないけど」


私がそう言うとさくちゃんは信じられないと言った顔をした。 何よ、心外だ。 私は、天使に手を出せるほどレベルの高い人間ではないのだから。 当然のことだろう、見ているだけでいいのだ。 「さくちゃんと一緒だよ」と言えば「は鈍いのねぇ」と困ったように笑っていた。 鈍いわけでは、ないんだけどさ。 この想いに気が付いているけど、知らない振りをしているだけなのだ。 私なんかと、あの黒子くんが・・・つり合うわけないのだ。 それは、私の困った趣向にあるのだが。 さくちゃんにも言ったことは無いけど、私は好きな人は虐めたいのだ。 加虐趣味、と言ってしまえば想像しやすいと思う。 好きな人を物理的にも精神的にも、虐めるのが好きだ。 でも、黒子くんは特別だ。 好き過ぎて、何をするかわからない。 私の中の黒くて汚い部分が、暴走してしまいそうで。 彼を絶対傷つける、それ程に好きだから。 だから、私は黒子くんを諦めている。 好きになってはいけない、彼はあんなにも眩しいのだから。 私が、汚していいわけがない。 だから、部活のときに少し見るくらい、それくらい良いじゃないか。


「せんぱーい!準備できましたー!」
「はーい!今行くー!」
「この話は終わり、さくちゃん余計なこと言わないでよね」
「はいはい、が素直になれるまで見守ってあげますよ」
「だからぁ・・・何か疲れた」


呼びに来た後輩の桃井ちゃんに手を振って、喋りながら用意していた1軍のドリンクを運ぶ。 さくちゃんは、重いドリンクを持ちながらもにやにやしていた。 きっと私の反応が面白いから、あんなに楽しそうなのだ。 腑に落ちないけれど、ドリンクを運んで行く。 マネの仕事はちゃんとしないと、黒子くんの役に少しでも立っていると思うと苦ではない。 ドリンクを運び終えると、ちょうど試合をしている所だった。


「あ、天使」
「え、黒子くんどこ?試合に出てるの?」


私には彼が、キラキラと輝いて見えるのだから、仕方ない。



燦 々 と 虜

(もう目を離すことは、出来ない)